ばけまなび

化学について書きます あとは雑記

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マイクロプラスチックって何  

 

どうも、たかおです。

 

2019年9月23日には、ニューヨークで国連気候行動サミットなるものが開催されていました。 16歳の若き環境活動家、グレタ・トゥンベリさんが演説する様子も盛んに取り上げられていました。どちらかというと環境大臣が「気候変動のような大きな問題は、楽しく、かっこよく、セクシーであるべきだ」と発言したことが記憶に新しい人も多いと思います。*1

 

www.un.org

 

また、ちょっと前になりますが、2019年6月末に大阪でG20が開催され、ここでも環境問題が盛んに議論されていましたね。

 

g20.org

 

何が言いたいかといいますと、近年欧米を中心に、国際的に環境問題への関心が非常に高まっているということです。

 

その議題の一つとして挙がっているのが海洋プラスチック汚染というやつです。ゴミとして自然に流れていくやつが多いようで、生態系や人間の経済活動にも大きな影響を与えているとのこと。

 

そのなかでマイクロプラスチックという言葉が頻出しています。 

私自身このマイクロプラスチックが何かよく知らんかったので、簡単な解説を加えたうえで調べたことをここで共有したいと思います。

 

 

 

そもそもプラスチックとは

それくらい知ってるわ!という人もいるとは思いますが、一応プラスチックとは何かを簡単に説明しておきます。

プラスチックをあえて日本語で言い換えるなら「合成樹脂」です。

もう少しちゃんと説明すると石油や天然ガスなどの天然炭素資源を基に高分子を合成し、この高分子に充填剤や補強材とかを混ぜ込んでできる材料のことです。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル(PEs)といったものがその代表例でして、皆さんもどこかで名前は聞いたことがあるかと思います。

私たちの生活にプラスチックは今やなくてはならない存在となっています。例えば次のようなものに、プラスチックは使われています。

  • 食品包装(レジ袋、ペットボトル)
  • 合成繊維(衣服、装飾品)
  • 生活用品(歯ブラシ)
  • タイヤ
  • 自動車部品
  • 電子部品(コンピュータ、スマートフォン
  • 建築用資材

                                                                                 etc....

 

プラスチックは(後述しますが)何かと便利というのがあって、幅広い分野で使われています。困ったらプラスチック、プラスチックサイコー!()プラスチック愛してる!()

 

 

 

マイクロプラスチックとは

定義 

では「マイクロプラスチック」とは何か、マイクロ、と冠するぐらいですから小さいプラスチックのことを指すのは間違いないわけです。

厳密には

5 mm以下の微細なプラスチック*2

とのことをマイクロプラスチックと呼称するようです*3

 

分類 

f:id:NeueChemikalie:20191006042306j:plain

マイクロプラスチックの分類

マイクロプラスチックは、発生源に依って2種類に分けることができます。

①二次マイクロプラスチック

二次マイクロプラスチックとは、これはもともと5 mm以上の大きさのプラスチックが海洋中で砕かれたり、劣化してぼろぼろになって5 mm以下になったものです。要するにペットボトルとかレジ袋をポイ捨てして放っておく、といったように「環境に配慮した処理がなされない」ことが起こると、海洋に流れていって、次第に「二次マイクロプラスチック」になるわけです。「俺ポイ捨てとかしねえし、エコバッグ使ってるし、関係ない(笑)」みたいな人もいると思いますが、そういう問題でもないというということが次の項目を読むと分かると思います。

 
②一次マイクロプラスチック

これは、自然界に排出・拡散される段階で5 mm以下のプラスチックです。

そんな小さいプラスチックあるんですか~てなるじゃないですか。あるんですよ。

以下はその例ですね。

スクラブ

歯磨き粉とか、化粧品の中に小さな粒子が入っているものがあると思います。これは歯の汚れ、毛穴の汚れを落とす研磨剤として入っているマイクロプラスチックなのです。こういうものを使うと、最終的には水で流し落とすわけですから、結果として自然に排出されていくのです。

●合成繊維

私たちが服を洗濯機でガーって洗うたびに、大量のマイクロプラスチックが発生しています。私たちの衣服の衣服のほとんど合成繊維を含みます。合成繊維は原料がプラスチックですから、これを洗濯機でごしごし洗うと繊維の一部が剥がれ落ちて排水に交じり、最終的に海まで行くのです。

 ●タイヤ

自動車が走行する過程で発生する摩耗片がマイクロプラスチックとして流出します。タイヤの原料もまた、プラスチック、天然ゴムやその他合成添加物であり、道路との摩擦によって少しずつ削れていくんですよね。

 

 

他にも、プラスチック製造時の摩耗、塗装の剥がれ、挙句の果てには靴底の摩耗までもマイクロプラスチックの発生源です。

意外かもしれませんが一次マイクロプラスチックの最大の発生源が合成繊維の洗濯だそうです。洗濯をしない人はいないでしょうし、靴を履かない人もいないでしょうから、少なくとも私たち全員がマイクロプラスチックを放出し続けているのです。もし、マイクロプラスチック問題を語るならば、誰しもが多かれ少なかれその当事者であることは避けられません。

 

 

問題点

 まあ小さいプラスチックが流れ出たところで?俺らに関係ないし(笑)と思う人も少なからずいると思います。しかし、世の中で騒がれる、特に環境問題としてひどく関心を持たれるのは、自然環境や我々人間にとってそれなりに影響があるからです。

考えられる影響の一つとして「食物の汚染」があります。

 

プラスチックの多くは、自然に分解したり、生体内で分解されたりすることはありません。基本的にはなくなることなく残り続けます。マイクロプラスチックもひとたび放出されれば消えてなくなることはありません。こういったマイクロプラスチックは魚介類や海鳥などが食事をする過程で体内に取り込まれ、残り続けます。

 

このプラスチックは海洋などに放出された段階でどうなっているか。海洋中の有害な有機化合物(ポリ塩化ビフェニル(PCB)など)を吸着して、濃縮されるということが起こり得ます。そうでなくても、プラスチックには(冒頭にも書きましたが)添加剤がおおく含まれています*4。これらが魚等の体内に取り込まれると、結果的にこういった有害物を取り込むこととなり、彼らの健康に悪影響を与える可能性があります。

 

そういった有害物質、ないし有害物質を含んだマイクロプラスチックが食物連鎖を上がり、濃縮されて人間に回ってくる―結果人間の健康に影響を与える恐れがあるのです。もちろんそれで人が健康を害したなどという報告は今現在出ていませんが、想定されるリスクとしては十分にありうるものだと思われます。

 

細かく書くと再現がないため、詳細を知りたい際は以下の文献が非常に参考になると思います*5

 

 まとめ

この記事で

・マイクロプラスチックとは何か

・マイクロプラスチックによってどういう問題が生じるのか

のみを紹介しました。

 

プラスチックは悪だ!と声高に叫ぶつもりもないですし、そういう類の考えは、きわめてナンセンスだと思います。しかし、我々はプラスチックの扱い方を、変えていく必要があるのかなと思いました。

このあたりの意見はまた別記事で書きたいと考えています(ここで書いたらますます冗長な文章になりそう)。

 

  

 

では

 

 

*1:僕もこれらの問題は(技術開発などで)セクシーに解決されてほしいなあと思います。

*2:プラスチック汚染とは何か 枝廣淳子 岩波ブックレット

*3:様々な定義があるらしいのでこれが必ず正しいというわけではない

*4:ビスフェノールなど

*5:*2に同じ