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おめがシスターズの実験動画を考察してみた -おめシスはいいぞー

どもども、オメガってる〜?

どうもたかおです。

 

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先日、推しであるバーチャルYouTuber「おめがシスターズ(通称: おめシス)」が実験動画を投稿していたのですが、それを見て、なんでこのような結果になるのか、科学的に説明できないものかとつい考え込んでしまいました。せっかくなので、あれこれ考えることで得られた成果を、この場をお借りして紹介できたらという思いでこの記事を書きました(誰得なんだよ....)。みなさんに科学に関する面白い事実を知ってもらうとともに、おめシスの魅力を感じていただく契機となれば幸いです。

 

動画を下に貼っておきます。

 

www.youtube.com

(おめがシスターズ 2019年11月22日投稿: なにを乾燥させる!?ドライフルーツ代役選手権!! )

 

それでは、やっていきましょう。

 

 

おめがシスターズとは

初めてその存在・概念を知る人もいるかもしれないため、おめがシスターズが何者かについて、簡単に説明させていただきたいと思います。

 

おめがシスターズは、2018年から活動するバーチャル双子YouTuberです。赤いリボンの姉・おめがレイ(以下レイちゃん、青いリボンの妹・おめがリオ(以下リオちゃん)が、バーチャルを武器にした個性的な企画から、歌動画にゲーム実況と幅広いジャンルの動画をYouTubeに投稿し活動しています。事務所による公式の紹介ページはこちら

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おめがシスターズ(upd8ホームページより引用)

バーチャルリアリティに存在するという強みを存分に生かしたチャレンジングな動画は、我々に想像だにしない驚きと喜びを与えてくれます。動画を見るうちに、おめシスのもつ独特な魅力に引き込まれていくことでしょう。

 

おめがシスターズから学ぶ科学

今回取り上げる動画のタイトルは「なにを乾燥させる!?ドライフルーツ代役選手権!!」ということで、動画内で、おめシスの二人が実験を行っています。ここでは、おめシスの二人がどのような実験をしたのかを紹介するとともに、「なぜそういう結果になったのか」という理由を、実験レポート風にまとめていきたいと思います。

 

背景

おめシスの二人は、コンビニなどによく置いてある、ドライフルーツに着目しました。「食材をドライにすることによって、味が凝縮されてうまみが増すらしい」と知り、食品乾燥機を用いてオリジナルなドライ○○を生み出したいと二人は考えたわけです。二人は、興味のある食材をそれぞれ二品ずつ持ち寄り、乾燥させることでどのような味の変化がみられるかを調べることにしました。

実験

レイちゃんはこんにゃくと、いくら

リオちゃんはプリンと、生わさび

を持ち寄り、これらを食品乾燥機中で38℃で15時間程度乾燥させました。

結果・考察

こんにゃく

こんにゃくは味が薄いから、ドライにすることで味が凝縮されると思うけれど、どのような味がするのか、という疑問からレイちゃんがチョイスしました。

見た目については、乾燥させることで水分が抜けしおしおになってしまったようです。

食べた感想について二人は

リオちゃん:

  • おいしくなーい 
  • 乾燥わかめのような・・・海の匂いを感じる・・・
  • カッピカピでパッリパリ

レイちゃん:

  • ゴミみてえな味だ 
  • 浜辺に落ちてるペットボトルの味
  • 味がしない(磯臭さは感じない)

と述べています。

 

なぜこのような結果になったのかを考察していきましょう。

こんにゃくは、グルコマンナンと呼ばれる物質と塩基性の凝固剤を混ぜることでできるゲル食材です。体積の90 %以上が水でできているため、乾燥させることで動画のように大きく体積が縮みます。*1 (本当はこのこんにゃくゲルについても語りたいのですが、ここでは割愛します*2)。

また、リオちゃん曰く「海の匂いを感じる」とのことでしたが、この原因は、使用したこんにゃくが海藻を混ぜ込んだタイプのものだったからだと考えました。実をいうと、こんにゃくの中には、黒色を付ける為にひじきなどの海藻をまぜこんで作ったものがあるのです*3。リオちゃんの感じた磯臭さは、こんにゃくが乾燥し、中に入っていた海藻の味が凝縮して出てきた結果なのだと推察されます。

一方でレイちゃんは「味がしない」と無味感を訴えていました。こんにゃくの主成分であるグルコマンナンそのものは、無味無臭の物質であるので、乾燥させて凝縮させても味があまりしないのだと考えられます。

 

イクラ

海鮮食品も結構干物とかになっているので、イクラも絶対においしい、という考えを基にしたレイちゃんのチョイス。見た目については、乾燥前後で体積の変化が少ないが、乾燥によってビービー弾のようにかたくなったようです。

食べた感想について二人は

リオちゃん:

  • 生臭い
  • イクラの味はする
  • 醤油をつけると生臭さが消えた

レイちゃん:

  • ヴっ
  • 腐ったシャケ

と述べています。

 

この結果の考察に関しては、正直詰め切れていません。

イクラは、たんぱく質の膜の中に液体分が入ったカプセルみたいな構造をしていたはず。これだと乾燥させたときに、カプセルが大きくつぶれてしまいそうな気もしますし、おめシスの二人も同じように想像していたみたいです。しかし、実際には、粒の形が大きく崩れることはありませんでした。これはイクラの構成物質がどのようなものか、それらがどのように組み合わさってイクラができているのかを理解することで説明可能だと思われますが、インターネット上にあまり情報がないため、今後詳細を検討していく必要があると思われます。(皆様はどうお考えでしょうか)

 

生臭さが強く表れた件についてですが、生臭さの由来であるトリメチルアミンが乾燥によってイクラの中で凝縮されたことが原因だと思われます。このように考えることで、醤油をつけることで生臭さが消え、リオちゃんがおいしく食べられるようになった事実も説明できます*4

醤油漬けにしてから乾燥すればましになったかもしれないですね。あくまで推測ですが。

 

プリン

どうなるか分からない。だからやるんですね!というリオちゃんの知的好奇心によって選ばれた一品。その姿勢、嫌いじゃないです。リオちゃんはバキバキになると想像していたようですが、果たして...。

 

見た目については、色が濃くなり、ちょっとしぼんだとのこと。リオちゃんの想像に反して、乾燥によってプルプルだったプリンがべとべとになったようです。

 

味については、

レイちゃん:

  • ゴムみてえ
  • ぷっちょみたい
  • カラメルっぽい味がなくなった

リオちゃん:

  • めっちゃおいしい!

と述べています。

 

なぜこのような結果になったのか考察します。話が複雑になりそうなので順を追って説明してきます。

今回使用したとみられるプリンは、グリコの「プッチンプリン」でした。プッチンプリン通常のプリンとは異なり*5ゼラチン・寒天が加えられているため、ゼリーのようなプルプルの食感になるのです。

どうしてゼラチンや寒天を加えるとプルプルになるかというと、どちらも、水に溶かして冷やすことでゲル化する物質だからです。

ゼラチンや寒天のゲルは、乾燥させることでプラスチックみたいなフィルムを形成することが知られています。市販で板のゼラチンや、棒の寒天を買うと、確かにパリパリの状態になっていますよね。一般にこれらのフィルムを作る際に、グルコースなどの単糖を加えると、それらが可塑剤(硬い物質を柔らかくするはたらきを持つ物質)としてはたらくようになることが知られています*6

 

結論として、今回プッチンプリンも、乾燥されたことによって今説明したようなフィルムになったと考えられます。しかし、中に入っている砂糖(グルコース)などが、フィルムを柔らかくする役割を果たすため、乾燥させたときの感触がべとべとになり、レイちゃんが語ったようなぷっちょみたい」「ゴムみてえ」なものなったと考えられます。

 

おそらくゼラチンや寒天が含まれていない通常のプリンを乾燥させても同様の現象は起こらないと考えられるので、この場合はリオちゃんが推測したようなカチカチ(バキバキ)の乾燥プリンが出来上がると思われます。実際にやっていないので断言はできませんし、上の考察が間違っている可能性も否めないですが。

 

とりあえず、リオちゃんと同じ感激を味わいたい人は、とりあえずプッチンプリンで実験を行いましょう。

 

あと、カラメルの風味が落ちたのは何でなんでしょうね。気になります。

 

生わさび

ワサビの辛み成分はすりおろすことで初めて出てくるという知識を披露したうえで、乾燥が辛さに与える影響についてリオちゃんは疑問を投げかけました。着眼点がすげえんだよなあ...(個人的感想)

 

乾燥させることでわさびから水分が飛び、見るからに体積が大きく縮みました。

 

食べた感想として

レイちゃん:

  • カタっ!
  • (しばらく置いてから)からーい!
  • (さらにしばらく置いてから)辛くてまずくて無理だ
  • まずい
  • その辺の木の枝の味

リオちゃん:

  • 森を感じる
  • カタっ!
  • アーホゥ!オーホゥ!

 

と述べています。

 

木の枝の味は、セルロースという成分に由来していると思われます。

すべての植物はセルロースを主構成成分として含んでいます。特に木には多く含まれているので、水分が抜けきったわさびからは、濃縮されたセルロース=木 の味がするようになったのだと思われます。極端に硬くなったのは、水が抜けてセルロースが結晶を作ったから(結晶化度が上がったから)かなあと推察しています。

そしてそれをかむことによって、すりおろした時と同様に、辛み成分が出てくるようになるため、しばらくしてから辛さを感じるようになったと考えられます。

 

そして、リオちゃんの疑問であった「辛さの程度は、乾燥前と後でどのように変化するのか」についてはこちら*7に研究がまとめられており、辛みの主成分は乾燥によって減少するという結果が出ています。

  

最後に

いかがだったでしょうか。皆さんにとって新しい発見はあったでしょうか。

やはり、実験となると「なぜ」「どうして」について深く掘り下げたくなりますよね。これを読んだ皆さんも、科学に関する新しい発見や疑問を得る事が出来たのではないでしょうか。

 

そして同時に、動画を通じておめシスのすごさを感じた方も少なからずいるのではないでしょうか。分かりやすい論理展開(背景⇒実験⇒結果⇒結論)、ほかにはない着眼点で行われる検証。あふれんばかりの親しみやすさに、科学的魅力も備えられているおめシスは、最強のバーチャルYouTuberではないでしょうか(個人の意見)。私もおめシスのように多くの方に楽しんでもらえるような科学コンテンツを生み出していきたいと憧れるばかりです。

 

また、相当分かりにくい文章になってしまったので、今後皆さんの意見を取り入れつつ改良を加えていくつもりです。よろしければ 記事に関する意見、コメント、感想等残していただければ幸いです。

 

 

 

 

おめシスはいいぞ

 

では

 

 

 

*1:ゲルとは何かについては過去記事を参照

*2:興味がある方は以下のpdfなどを読まれるといいかもしれない。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/64/6/64_292/_pdf

*3:確認したところ、動画に使われていたこんにゃくの原材料に海藻粉末が記載されていた。 以下のページを参照 国産使い切りサイズ生っ粋のこんにゃく | 株式会社関越物産

*4:トリメチルアミンは醤油によって中和され、生臭さが抑えられる

*5:通常のプリンは、加熱のみで作られる。ゼリーとは異なり、滑らかな食感になる

*6:例えば次のような文献に記述がある。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane/36/4/36_4_177/_pdf/-char/ja

*7:https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/29/4/29_4_232/_pdf