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化学について書きます あとは雑記

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ワイゼンベルク効果の原理 ー納豆を混ぜると起こるあの現象についてー

社会は非常にクソですが、ゲルはかわいいです。

 

どうもたかおです。

 

今日は、「ワイゼンベルク効果」について話をしたいと思います。

 

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クソサムネ PowerPoint職人の限界

 

ワイゼンベルグ効果とは

ワイゼンベルク効果とは、粘弾性液体*1の中に棒を入れて回転させたときに、棒に絡みついて這い上がっていく現象のことを言います。

 

具体的なイメージとしては、納豆を箸で混ぜるとき、箸の回転と共に納豆のねばねばが箸を伝って登ってくるあの現象です。勢いよく混ぜるとすぐに上がってくるので、いったん糸を切ってまた混ぜる、みたいなことをする人は結構いるはずです。もっと言えば、スライムにガラス棒を入れて回転させると、ガラス棒を伝ってスライムが登ってくる現象が見られます。(スライムを作る予定の方は是非試してみてくださいね)

 

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ワイゼンベルグ効果模式図

普通の液体(ニュートン流体) ー例えば水ー は棒を入れて回転させると、液体が遠心力で外側に向かっていき、中心がくぼんでいきます。ところが納豆のねばねば成分や、スライムなどの粘弾性液体では逆のことが起こり、内側が盛り上がってくるのです。それはどうしてでしょうか。

 

原理

粘弾性液体の性質

ワイゼンベルク効果を理解するために、まず粘弾性液体が持つ性質について少し詳しく説明したいと思います。一応過去にも少しだけ触れているので、リンクを貼っておきます。

neuechemikalie.hatenablog.com

粘弾性液体は、固体と液体の両方の性質を持った物質だが、どちらかというと液体である物質だよという説明が上の記事でされています。こういった物質は力をかけた瞬間(例えば地面において重力がかかった瞬間)はゴムのようにびよーんと伸びます。力をゆっくりかける、もしくは力をかけるのをやめる(例えば地面においてから放置する)と液体のようにゆっくりと流れていくわけです。

 

こういった物質は力をかける速さが速いほど、より固体のような性質(ゴムのような弾性)を示すようになり、力をかける速さが遅いほど、液体に近い性質を示します。

 

”輪ゴムが縮む”のと同じ原理

何故こういうことが起こるのか、という説明はよく、「引き伸ばした輪ゴム」を持ち出して説明されることが多いです。

 

粘弾性液体に棒を突っ込んで回転させると、粘弾性液体には図のような力がかかります。

 

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棒を回転させたときに粘弾性液体にかかる力

 

粘弾性液体はすばやく力をかけると固体のような振る舞いを見せますから、力をかけた方向に液体はびよーんと引き伸ばされるわけです。

 

この力のかかり方はまさに輪ゴムが広がってのびている状態とそっくりではないでしょうか(提案)。

輪ゴムを広げた後、力をかけるのをやめてしまえば、輪ゴムは元の大きさに戻ろうと縮む方向に力が働いていきます。

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輪ゴムが伸びたときにかかる力

ワイゼンベルク効果というのはまさに、輪ゴムが縮むのと同じような現象が見えているのです。

 

円方向に引き伸ばされた粘弾性液体は、輪ゴムが広がったような状態になっているので、緑の矢印のように力が働き、内側に収縮していこうとします。それによってさらに内側の液体を棒に向かって締め付けていくことになるのです。最終的に、行き場のなくなった粘弾性液体は棒を伝って登っていく、というのがワイゼンベルク効果の抽象的なイメージになります。f:id:NeueChemikalie:20191223004823j:plain

 

分子論的な記述

なるほど~理解は簡単だから*2式とかで書けるのかなと思った方もいるかもしれません。

 

しかしながら、結論を言うと式は結構複雑になってきます。式を見て全容を理解できるものならばいいのですが、そういうものでもないので、私の手で説明することは控えたいと思います。

 

かなり古い文献にはなりますが、式での記述については田村らの記述が非常に詳しいと思うので、どうしても興味がある方は読んでみてください。これ以外にあまり見たことがないだけで、もっといい記述があるのかも知りませんが。

ワイゼンベルク効果について 田中幹雄 倉田道夫 小高忠男 山本三三三

 

何の役に立つの

社会人25年目の方から「んで、それ儲かんの?それで食ってけれるの?」なんて唐突に言われるこのご時世です。このブログだって何の脈絡もなしにやり玉に挙げられるかもしれません(被害妄想)。

 

この効果を理解することが何の役に立つのか、それは粘弾性を持つ物質を加工するときに重要になってき得るという認識でいます。

悲しいことに、Wikipedia情報しか得られていないので、具体例は挙げられないのですが、*3。「ワイセンベルク効果は、攪拌工程において障害となるためよく知られている」と書いてあるように、ワイゼンベルク効果はものを混ぜる過程で時にモノづくりの効率を下げたり、機械が正常に動くのを妨げる可能性があることが考えられます。ワイゼンベルグ効果の原理をある程度理解し、これとうまく向き合っていくことがモノづくりにおいては重要なのかもしれません。

   

最後に

いかがでしたでしょうか。ふんわりとしたイメージの解説にとどまりましたが、これを足掛かりに、ワイゼンベルク効果について理解を深めていただけたならば幸いです。

 

今回は納豆とスライムをワイゼンベルク効果を起こす代表例として紹介してきましたが、ほかにもワイゼンベルク効果を起こす物質は結構日常に隠れています。いろいろと実験してみるのも面白いかもしれないですね。

 

質問、ご意見等ございましたら、是非コメントによろしくお願いします。もしくはTwitterでリプ飛ばしてください。*4

 

では

*1:粘弾性液体の定義については、次項記事を参照

*2:分かりにくい部分があればぜひコメントいただきたい。嘘は言ってないはず。

*3:ワイセンベルク効果 - Wikipedia 具体例をご存じでしたらコメントにお願いします

*4:進捗のたかお (@prismanebenzene) | Twitter