高野豆腐と健康について ー健康にいいと言われる根拠は?-
最近不摂生がたたって太ってきています。
どうもたかおです。
今回は、高野豆腐が健康にいいと言われているのはなぜかについて考えていきたいと思います。
以前の記事で高野豆腐ができるメカニズムを化学的に考えたうえで、高野豆腐が健康に良いという報告があるという話をしました。
しかし「健康にいい」といった類の情報を鵜吞みにしてはいけないということは、聡明な皆さんなら十分理解していると思われます。この場合、摂取したものがどのような影響を我々の体に与えうるのか、どのような根拠をもとに健康効果が謳われているのかについて理解することが重要です。
このブログでは
- 高野豆腐に含まれる、どの成分が健康にいいとされているのか
- その物質がどのように効果を発揮しているのかどのような意味があるのか
について、これまで報告されている内容を基に、調べた結果を皆さんに紹介していきたいと思います。胡散臭い記事だと勘違いされないように、気を付けて書いていきますのでよろしくお願いします。
注意事項(まず読んでほしい)
あらかじめお伝えさせていただきますが、モノが人間の健康に与える影響というのは評価の仕方や条件などで大きく変わってくるものでもあり、ここで紹介する内容が今後も正しいと評価されるかは分かりません。またその影響というのも個人差があると思われます。ここで紹介する内容については効果を絶対的に保証するものではなく、摂取を積極的に促すものではないこと、ならびに既報を紹介するのみにとどめていることを強調いたします。ここで参考にした情報ソースにつきましては末尾にすべて記載しておりますので、元情報をあたられたい方はそちらをご覧ください。今後これらの情報について、私の無知による誤解があった場合、もしくは今後情報に対するnegativeな報告があった際は、必ず訂正の一報を入れさせていただきます。以上のことを踏まえていただいたうえで、これからの文章をお読みください。
高野豆腐について
高野豆腐とはどのような食材なのかについては以前の記事を参照していただけると幸いです。今回の話において重要となってくる、高野豆腐ができるメカニズムについて簡潔に説明しますと、
- 豆腐を凍結、熟成させてできた食材
- 熟成の過程で豆腐の網目構造を形成しているたんぱく質が凍結変性して連結する。
となります。
高野豆腐の成分と想定される効果
カルシウム
高野豆腐を作る際に使われる豆腐、この豆腐を作る時に使用される凝固剤には主に塩化カルシウムが使われているそうです*1。従って、普通に豆腐を食べるよりはカルシウムが効果的に取れるということになります。牛乳とのカルシウム量の比較*2 を載せた記事も存在しますが、実際のところ単純な比較はできません。高野豆腐の場合は乾燥状態での(重さ100 gあたりの)栄養成分表示であるため、我々が普段食するように出汁などに浸漬した状態でどのような値になるのかはまた別個にデータを求める必要があると思われます。
カリウム
カリウムは神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きを持つらしいですが、膨軟処理をする際に炭酸カリウムを用いている高野豆腐があるそうです。この場合は比較的効率よくカリウムが摂取できると考えられています。*3
レジスタントプロテイン
先ほど説明したように、高野豆腐作成の凍結・熟成の過程で豆腐中のタンパク質が連結します。これによって大豆たんぱく質の分子量(たんぱく質1つあたりの重さ)が大きくなります。このような状態のタンパク質*4は消化効率が悪く*5消化されずに体外に排出されます。このようなたんぱく質を「レジスタントプロテイン」と呼ぶそうです。
これらを摂取することによって、以下のような効果があるという報告があります。
1. 血中コレステロールの調節作用
コレステロール値が正常でないと、「動脈硬化」などの病気を引き起こしやすいとされています。なんだかんだでこのご時世このコレステロール値に悩まされている人も多いのではないでしょうか*6。
高野豆腐メーカーの一つである旭松食品*7の報告によれば、高野豆腐を継続的に摂取することによって、コレステロール値が低下することが種々の研究によって報告されているとともに、善玉コレステロールが有意に増加したことも別の研究で確認されているということです。
2.血中中性脂肪の調節作用
中性脂肪という言葉は比較的耳なじみのある言葉だと思いますが、私たちのエネルギー源となるものです。取りすぎた物は皮下脂肪としてお腹周りにくっつきます。参った参った。高野豆腐を食事で摂取することによって中性脂肪の吸収率が低下した、といった類の研究報告があるようです。
その理由は
現段階で考えられている理由として、レジスタントプロテインと胆汁酸との関係性が挙げられています。とてつもなくざっくりいうと、
- レジスタントプロテインが腸管内に入る
- 腸管内の胆汁酸がレジスタントプロテインと結合する
- 体外に排出される
- 減った分の胆汁酸を作るために、原料であるコレステロールを消費する
- 体内のコレステロール量が減る
とのことです。
胆汁酸は脂質の分解吸収を助ける物質で、コレステロールを原料に体内で作られます。大部分の胆汁酸は基本的に食事で得た成分と共に体に吸収され、肝臓に戻ってから再び消化管に戻るということを繰り返すため、体内でほとんどロスなくつかわれるわけです。レジスタントプロテインはこの胆汁酸と結合して体内から糞便として出ていくことがラットを用いた実験から分かっています。すると体内の胆汁酸の量が減るわけですから、それを補うために、原料のコレステロールを消費して胆汁酸を作るわけです。これによって体内のコレステロール量が一時的に減ることになるというメカニズムです。
レジスタントタンパクは、中性脂肪も吸着する性質を持っていることが確認されており、結果として体内から脂肪を排出することができるということだそうです。
そもそも
そもそもの脂質も少ない高野豆腐ですから、それだけでも、高脂質になりがちな日ごろの食事に、タンパク源として取り入れるのに十分価値がある食材だと言えるのではないでしょうか。このあたりは個人的な所見ですが。
最後に
いかがだったでしょうか。
高野豆腐を作る過程で加えられるもの、ないし、高野豆腐の形成過程で起こる化学変化によってできたものが、我々の健康に案外と良い影響を与えるということが示唆されているという事実を、メカニズムと合わせて紹介しました。この記事を読んで、高野豆腐を適度に食べようかな~と思うのもよし、本当かよ胡散臭いなと思って、もっと論文を調べようと思うきっかけになるのもいいと思います。一番よくないのは、根拠となるモノを調べたりせずに情報を鵜吞みにすることなのです。
質問、感想、率直なご意見等ございましたら是非コメント欄にお願いします。今後も定期的に、このような親しみやすい化学の記事を載せていきたいと思いますので、読者登録もしていただけると幸いです。Twitterもやっておりますので、よろしければフォローよろしくお願いします。
もう怖いんでできれば健康関係の記事は書きたくないですね
では
参考文献
大豆レジスタントプロテインの栄養機能特性
https://www.fujifoundation.or.jp/report/pdf/020/20_129.pdf
Resistant Protein; Its Existence and Function Beneficial to Health
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnsv1973/48/1/48_1_1/_pdf/-char/en
その他
コレステロールって何だろう?|食生活|運動|動脈硬化疾患|脂質異常症
など
*1:おそらく高野豆腐を作るのに適した硬い豆腐を作るため
*2:普通牛乳100 gあたり カルシウム110 mg 高野豆腐100 gあたり660 mg 日本食品標準成分表より
*3:旭松食品のみか? 社の主張については以下のリンクを参照 新あさひ豆腐のこだわり | 旭松食品
*4:不溶高分子画分(HMF(high-molecular-weight fraction))と呼ばれている
*5:分子量が大きくなることが直接の原因なのか、たんぱく質のコンフォメーション的な問題なのか、私自身はよくわかっていない。もし知見のある方がいたら教えてほしい。
*6:僕も決して他人事ではないので気を付けなければならない。