ばけまなび

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【なぜ】ゴムが伸び縮みする原理

どうもたかおです。

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こんないい加減なサムネを作るから誰も見てくれない わかっちゃいるけどやめられない

はじめに

みなさん、ゴムって何かご存じでしょうか。

おそらく多くの人は、「引っ張るとめっちゃ伸びて、手で離すとぱちんと戻る弾性材料のことをイメージします。このような性質を「ゴム弾性」と呼んだりします。

こうしたと特性を生かして、ゴムは輪ゴムをはじめ、タイヤホース靴底など、さまざまな形態で様々な用途で使用されています。

では、ゴムはどうしてこのような性質を示すのでしょうか。

結論を先に言うと、

 

高分子鎖のエントロピー弾性+架橋の組み合わせで

ゴムの性質が発現する!

 

ということになります。

少し詳しく見ていきましょう。

ゴムとは

そもそもゴムとは何か、ということについては以下記事にてまとめております。

neuechemikalie.hatenablog.com要は、「高分子を架橋して出来る、弾性を示す材料」です。*1

ゴムと呼ばれるものの代表例として、ポリイソプレンを加硫した架橋体が有名ですね。

エントロピー弾性

つまりゴムの性質を知るためにはまず、ゴムを構成する高分子の性質の一つ、エントロピー弾性を知る必要があります。

高分子という分子は、下のように、セグメントと呼ばれる構成単位がつながってできたひも状の分子です。

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高分子の模式図 セグメントの連なりでできたひも状の分子

 

こうやって絵で見ると、子どもが手をつないではしゃいでいるように見えませんか?

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手をつないで動き回る子ども 彼らは社会の無慈悲な側面をまだ知らない

というわけで、この子供の両末端で手をつないでいる、引率の大人たちの気持ちになってみましょう。子供は元気いっぱいですから、手をつないだ状態でもあちこち走り回ろうとします*2

大人同士が近くにいると、子供は自由に動ける範囲が増えます。ですので大人が子供を引っ張る力はそこまで大きくなくて済みそうです。

一方で大人が離れていると、子供はピンと伸ばされた状態で、自由に動ける範囲が少なくなります。だからといって子供のアクティブさは変わりませんから、大人は子供の動きに強く引っ張られますよね。力を抜きたければ大人同士が近くに戻ってくる必要があります。

高分子でも同じことが起きます。両末端が離れるほど、構成単位が動ける自由度が減り、両末端に張力が生じるのです

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エントロピー弾性

この性質のことを「エントロピー弾性」といいます。

実際に理論的に記述すると、理想的な高分子一本に働く張力は、高分子の両末端の距離 rに比例することが導き出せ、まさにフックの法則と同様になることを示すことができます。

架橋による復元力

しかし、これだけではゴムの弾性を説明できても復元力(元の形態に戻る性質)を説明できません。この復元力は高分子の架橋によってはじめて発現します。

例えば、生ゴム(架橋していないポリ-cis-イソプレン)を伸ばした際には、一時的にゴムのような性質を示してくれますが、元の状態に完全には戻りません。これは高分子末端の運動が抑制されていないために、伸ばした後に重心が動いてしまう*3元の場所に戻らないからです。

しかし生ゴムを架橋することで、下の図のように高分子の末端の運動が抑制されます。これによって高分子は伸びて弾性を示した後に元の場所に戻ってくれる=ゴムの形が復元するのです。

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架橋があるがゆえに復元する

最後に

ゴムが伸び縮みする原理を説明しました。

改めてまとめますと、

①高分子に「エントロピー弾性」を有すること

②高分子が架橋されることで末端の運動が抑制されること

で伸び縮みが実現している、ということです。

当たり前のようにゴムが伸びる様を見ている我々からすれば、どうしてそうなるのか、というところに頭が回らないところですが、分子の構造と性質を理解すれば説明することができます。

この記事を読んだ皆様方には、スーパーの惣菜のパックを輪ゴムで止める時に高分子がダイナミックに動くさまを想像していただければ幸いです。

 

では

 

*4

 

*1:この辺りは用語がごちゃごちゃになっているため困るところですが、エラストマーとゴムが混用されている実情に合わせて、この記事においては「エラストマー=ゴム」として扱いたいと思います。

*2:セグメントのこのような運動を、ミクロブラウン運動と呼ぶ。

*3:この運動をマクロブラウン運動と呼ぶ。

*4:びっくりしているのがこういう説明をしている記事がほとんどないこと。どちらの要素もしっかり説明しないとゴム弾性って説明できないはずなんですけどね。多少の嘘はいいとして、必要要素を削っちゃいけないだろ~と思うけれども、そういうもんなんでしょうね。