【雑記】高分子オタクの異動 ほか
鬼のように仕事
読者の皆様方におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
どうもたかおです。
最近睡眠時間を削って記事を更新しております。よろしければご覧ください。
高分子オタクの異動
入社後に配属になった部署から突然異動になりました。
プロジェクトがうまく軌道に乗ってほっとしていたところで急に内示でしたね。
↓内示が出る前に書いた吞気な記事
未来の自分のために記録しておきますと、内示はマジで辞令が出る直前にくるので、心の準備ができません。いつ来るか分からないという心づもりで仕事しましょう。
今は新しい仕事の立ち上げで忙しくしています。次の仕事も軌道に乗るように頑張りたいと思います。
成し遂げたい
一般論としてこうあるべき的な話や、それはおかしいだろ的な話はさておいて、私は生きている以上、何かを成し遂げ、生み出し続けなければと考えています。
そういう意味でプロジェクトを最後まで完遂できずに部署を離れることとなり、腸が裂かれるくらいにつらかったです。つらすぎて次の日仕事にも拘らず独りでウイスキーの瓶を半分空けました。サラリーマンはつらいものだとは覚悟していましたが、なるほど、こういうつらさもあるのかと痛感している次第です。
正直これから先もこういう思いを多々するのだと思いますが、少なくとも今の仕事は「自分の手で成し遂げて見せる」という強い志を貫いてやろうと思います。あまりつらい思いはしたくないですしね。
- 圧倒的成果
- 圧倒的成長
- 創造と破壊
- Rock'n Roll★
ですね。
ブログの記事も「いつか更新しよう」だと一向に更新せずに、結局何も成し遂げられず終わってしまうのではと、この異動を機に思うようになりました。誰が読んでくださるかわかりませんが、継続して記事を残していきたいと思います。
最後に
私は優れた人間ではありませんし、面白い人間でもありません*1。
それでも、科学に対して自分なりに誠実に向き合って頑張って生きたいと思います。
そんな私が運営する「ばけまなび」を今後も御贔屓に。
では
【DNAはかたい? 】高分子の屈曲性とは
仕事つらぽよ
どうもたかおです。
はじめに
高分子とは、モノマーがつながってできた分子で、よく鎖だとかひもに例えられます。化学の世界ではこうした構造を繰り返し単位をかっこでくくって表記することを良くします。
しかし、この高分子のヒモそのものの形や大きさについて考えたことがある人は少ないのではないでしょうか。例えば、溶媒の中に一本の高分子がポツンと存在していた場合、この鎖はどのように存在しているか、皆さん想像できますでしょうか。
私自身、この概念を大学の講義で聞いて、考えたときに「そういえばわからんなあ」となったのですが、皆さんは気になってきませんか?
そういったヒモの形を定める指標として、高分子の屈曲性(グネグネ曲がりやすさ)というものが挙げられます。
今回はそういった高分子の「グネグネ具合」の観点から、いろんな高分子を見ていきましょう。
高分子の屈曲性
そもそも高分子に屈曲性がある状態とは何を指すのでしょうか。ちょっと卑近な例を挙げて考えてみましょう。
例えばブタン(CH3-CH2-CH2-CH3)を想像しました時、この分子は中央の単結合を軸に回転することが出来ます(内部回転, 分子内回転)。*1
ポリエチレンやポリプロピレンといった高分子は、このブタンみたいな炭素の連なりが長くつながっているため、炭素同士の単結合を軸にした分子回転の自由度が多数あります。これによってポリエチレンやポリプロピレンは、高分子が溶媒の中にポツンと存在していた際にぐにゃぐにゃに折れ曲がって、ヒモが入り組んだ「糸まり」状態をとると想像できます*2。
まとめると、C-C単結合といった、結合周りの分子内回転が起こりやすく、その形態が容易に変化する状態を屈曲性があるというわけです。こういった性質を持つ高分子を屈曲性高分子と呼び、大体の汎用高分子(ポリエチレン、ポリプロピレンなどなど)はこの分類に入ります。
では屈曲性がないとはどういう状態か?というと、この分子内回転がない、もしくは阻害されている状態のことを指します。
たとえばポリ(p-フェニレンテレフタルアミド), 通称ケブラーは、繰り返し単位を見ていただくと分かるように、パラフェニレン基とアミド結合の組み合わせでできており、分子内回転がしにくそうな1次構造となっております。
こうした分子はぐにゃぐにゃと曲がらないので、溶媒の中でポツンといる際も、ワイヤーや針金のように真っすぐ伸びた状態となります。
また置換基があることで分子内回転が阻害されている高分子や、DNAのように水素結合を介してらせん構造を作る高分子は、形態が変形しにくいことが知られています。ほかの例としてはセルロース誘導体(酢酸セルロース)やポリマーブラシ(側鎖に長いヒモがたくさんついている高分子)があります。
こうした屈曲性の少ない高分子を、その”かたさ”に応じて剛直性高分子だとか半屈曲性高分子と呼びます。
屈曲性が与える影響
屈曲性が違うと、もちろん高分子そのものの性質が全然異なってきます。
一番顕著なのは、製品に加工した時に高強度なものができやすいというところがあると思います。
それはなぜか。
高強度の高分子材料を作るためには、結晶化度を上げる必要があるのですが、そのためには高分子のヒモを伸ばして揃える必要があります。
糸まりみたいな高分子(屈曲性高分子)がグチャグチャに絡まっている状態をほどいて揃えるのは難しそうですが、茹でる前スパゲティのように棒状に硬ければ揃えるのも簡単そうですよね。
したがって鎖の屈曲性が低く"かたい"高分子は高強度の材料になりやすいのです。
最後に
今回は高分子の屈曲性について触れました。
高校までしか高分子を見たことがない人にとっては、少し変わった高分子の見方ができたのではないでしょうか。DNAときくと、やはり生物における重要な機能を持った分子ではありますが、タイトルや記事中にも挙げたように、高分子としてみると「二重らせん構造を取り、曲がりにくい」という物理的にも強烈な個性も持ち合わせていることが言えるわけです。このように色々な観点から見ることが出来るというのも、分子の面白さなのではないでしょうか。
では屈曲性はどう測るのか?DNAは実際のところどれくらい”かたい”のか?
という素朴な疑問についても書きたいところでしたが、それについては高分子の教科書に任せたいと思います(文字数も多くなりますしね!)。
面白いと思った方はコメント、スターをよろしくお願いします。今後もニッチな記事を上げていきますので読者登録もいただければ幸いです。
では
【楽しい!】レオロジーの学び方
人生山あり谷あり、自分の理想とはベクトルがよくずれます。
どうもたかおです。
はじめに
当ブログでよく話題にしてきたレオロジーですが、重ねて説明すると「物質の変形と流動」を見る学問でした。つまりレオロジーを勉強すれば、なぜゲルがプルプルなのかも説明できますし、スライムの不思議な感触も理解することが可能です。
また工業的な世界においてもレオロジーは重要な役割を発揮している学問です。例えば(高分子では顕著ですが)、化学的には優れた樹脂なのに、熱をかけて加工しようとしてもうまく加工できない、加工条件を変えると、思った物性が出ない、といった問題に直面した際に、レオロジーを理解していればそれを基に解決の糸口を見つけることが出来ます*1。
このように面白くて役に立つレオロジーについて紹介している記事はインターネットにたくさんありますし、レオロジーに関する良著も多く刊行されています。お金を出せばレオロジーのセミナーも受講することができるでしょう。レオロジーを学ぶ環境は初めて学ぶ人にも開かれていると思います。
しかしながら、レオロジーをどう学んでいけばいいのか、という点を説明した記事は少ないように思います。そんなものなくても独学することはもちろん可能ですが、最終的に何を理解することが出来たら楽しくて、そのために何を理解する必要があるのか、なぜそれが大切なのかが分かれば、より一層楽しく勉強できるのではないでしょうか。
今回はレオロジーが活躍する主たるフィールドの一つ「高分子」のレオロジーについて何をどう学べばいいのか、その一例について紹介していけたらと思います。
対象については以下を想定しています。
- 高分子レオロジーに興味あるけど、何をどう勉強したらよいか分からない人
- ある程度勉強を進めてきたものの、知識が整理できなくなってきた人
- 化学は分かるけど物理はちょっと...な人
需要あるのでしょうか。過去の私だったら、こういう情報が知りたかったなとも思うので、挑戦的ですが書いてみることとします。
どうぞよろしくお願いいたします。
お勉強の流れ
1. 変形様式
物質の変形と応答を見るといっても
- そもそも変形とは何か
- 変形の種類って何があるの?
- 変形の大きさや、変形に対する応答の大きさを評価する物理量は?
が分からないと、何が何だかわからないですよね。
具体的には
- 変形の種類: 伸長変形とせん断変形
- 変形の大きさ: 伸長ひずみ と せん断ひずみ
- 変形に対する応答: 伸長応力とせん断応力()
がレオロジーでよく扱う変形と物理量です。どんなレオロジーの教科書にも書いてあるので、まずはしっかり抑えるポイントだと思います。
2. 弾性・粘性・塑性の三つの性質
私たちの身の回りには、スライムやマヨネーズ、水あめみたいに「これ固体か液体か分からない」みたいなものがたくさんありますよね。実をいうと世の中の物質はこの変形(変形速度)と応力の関係でどういう性質のものかを全て分類することができます。
分類は弾性・粘性・塑性という3つの性質の組み合わせで実現できます。
従ってまずは理想的な弾性体、粘性体、塑性体のひずみ(ひずみ速度)と応力の関係を理解をすることができれば(`・ω・´)bと思います。簡単に下にまとめてみました。
- 理想弾性体(フック弾性体): 応力とひずみが比例関係にある
- 純粘性流体(ニュートン流体): 応力とひずみ速度が比例関係にある
- 理想塑性体(ビンガム塑性体):ある一定応力をかけたときに流動し、以後応力がひずみ速度に比例する*3
3. 非理想的な物質と分類
上で挙げた性質はあくまで理想的なもので、多くの物質は理想的な性質からずれていることが多いです。そういった非理想的な物質の代表例とその名前を覚えましょう。
例えば当ブログで取り上げてきたダイラタント流体*4であったり、スライムなどが該当する粘弾性体*5というものがこれに該当します。
こういった複数の分類もレオロジー的には固体か液体かに大きくくくることが出来ます。
こういった分類がある中で、高分子は粘弾性体に分類されます。高分子のレオロジーを理解するために、まず粘弾性を理解していきましょう。
4. 粘弾性を特徴づける現象と物理量
粘弾性とは、その名の通り粘性と弾性が合わさった性質のことで、具体的には、時間によっては弾性的になったり、粘性的になったりする性質のことを指します*6。スライムをイメージしていただければ分かりやすいですが、変形を加えた瞬間はブヨンと弾性を示すのに、時間が経つと粘性が現れ始めてドロドロ流れていきますよね。アレです。
私たちはスライムをはじめとした粘弾性体を触った時に、抽象的な表現でこれらを表現することが出来ます(こっちの方がねばねば、とか、こっちの方がさらさら、とか)。しかしながらこれでは個々の粘弾性体の性質を数字で比較することが出来ません。粘弾性を数字で評価できるようになるために、粘弾性を表現するのに必要な現象と物理量を覚えましょう。
例えば現象としては
- 応力緩和
- クリープ
- 動的粘弾性
が挙げられますし、この現象を表す物質量としては
など、他にもいろいろなものがあります。
5. 高分子とは
高分子のレオロジーということは高分子とは何か、ということを理解しなくてはなりません。「なめているのか」と化学徒の皆さんは思われるかもしれませんが、化学での高分子の捉え方と、レオロジーのような物理での高分子の捉え方は少し異なります。
例えば、化学徒のみなさんは高分子をモノマー(分子的な単位)の重合体で考えますが、物理ではセグメントというある一定の塊単位の連なりでこれを記述します。
この考え方を起点に、どうして高分子が弾性を発現するのかが、理論的に説明できるようになるのです。
こうした物理的なとらえ方を理解することで、高分子のレオロジー(=高分子の粘弾性)を分子の気持ちで議論することが出来るようになります。
6. 高分子の粘弾性
粘弾性とは、高分子とは、というところを理解したうえで、高分子で粘弾性を評価する手法と実際に得られる粘弾性挙動を見ると、化学だけでは感じられないダイナミックな高分子の姿が浮かびあがってきます。要は得られる力学的性質を分子の動きで説明できるようになると言いたい。
高分子の運動様式は分子全体が動く大きい運動から、分子の一部分しか動かない小さい運動までいろいろあり、これらは変形を加えてから時間差で出てきます。それぞれの運動が現れてくる領域を下のように分けることが多く、これらについてどういうものか理解すると、ウニョウニョ動く高分子を満喫できます。
- ガラス領域
- 転移領域
- ゴム状領域
- 流動領域
こうした高分子のダイナミクスを実際に評価する上では
- 時間-温度換算則
というある種の経験則を学ぶ必要があります。
また、分子の運動を式で見たいという方は、
- Rouse模型
- 管模型
という二つのモデルを理解することで抑えられるはずです。
もう少し具体的に言及すると、高分子は加工するときの状態である高分子液体と、加工して出来上がった状態である高分子固体では、評価の仕方も、見ている高分子の運動も少し変わってきます。ですから、これらの内容は多くの教科書で明確に分かれていることが多いです。
高分子液体のレオロジーは高分子を加工する際の”流動”のコントロールによって、出来上がりを制御するという意味で役に立ちますし、高分子固体のレオロジーは出来上がった製品がどうしてそのような性質を示すのか、もっといい性能を出すためにはどうしたらいいのか、みたいなことを評価する上で役立つと思っています。ここまできますと、専門的な内容になってきますから、目的や興味に応じて勉強しましょう。
ちなみに私もまだまだ勉強中といった所なので、偉そうに講釈することはできません。
皆さん一緒に勉強しましょう!!!
何で勉強すればよい?
以前別の記事でおすすめの教科書を紹介しました。よろしければ参考にしてください。
最後に
今回は柄にもなく、高分子のレオロジーの学び方について一例を紹介しました。
こんなニッチなブログを読む皆さんのことですからよくご存じだと思いますが、勉強は理解できれば楽しいですし、どんどんのめりこむことが出来ます。今回の記事を通して、レオロジーを学びたいと思った方が、挫折せずに学べるヒントを提供できたらいいなあと思います。レオロジーを面白いと思ってくださったら嬉しいです。
上に書いた内容について、今後小話を書いていくかもしれません。お楽しみに。
もちろん今回の例が絶対的な王道ということはありません。人によって理解の仕方は違いますし、やりようもたくさんあります。そもそも私自身まだまだ知識を重ねている最中です。あくまで「参考にしてください」ということは強調させてください。それから、偉い人が見てましたら、間違いをご指摘下さい。間違いは真摯に訂正します。
では
参考文献
基礎高分子科学, 高分子学会 編
レオロジーの世界, 尾崎邦宏 著
*1:理解しているからといって必ず解決できるわけでもない。現に私が苦しんでる。
*2:2021/9/1 誤植を訂正
*3:理想塑性体とあえて記載したが、機械工学とかの世界でこのように表記すると少し意味合いが変わってくるらしいので注意。
*5:スライムは固体?液体? - ばけまなび や スライムの原理 -構造から考えるー - ばけまなび
*6:よく、粘弾性=固体と液体を合わせた性質と記述する記事があるが、この表記は正確ではない。上で挙げた塑性体も、一定応力を書けないときは固体、一定応力以上では流動するため液体、といったように固体と液体の両方の性質を持ち合わせている。