ばけまなび

化学について書きます あとは雑記

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やりたいことをやるために全力は尽くしたい。でも、もし望んだ道が目の前に現れなかったら。

博士論文の公聴会に観客として参加させられるすることとなった。修論がまとまらなくて焦るばかりの日々であるはずなのに、こうも呑気に椅子に座って話を聞いているというのも不思議な感じだ。

 

博論*1のテーマは、(特定を避けるべく思いっきりぼやかして言うならば)プラスチックの力学的性質に関するものということで、レオロジーの分野を取り扱っていた。話を聴きながら、ああこんな感じの研究あったなとか、そういえば最近他でこのテーマに関する研究を聞かないな、なんて色々考えたりする。周りの学生のほとんどもとても真面目に聞いている様子なんてなくて、スマホを見たり僕みたいにほかのことを考えながら過ごしているようだ。長い長い発表は、僕を心底しょうもない考え事へと突き落とす。

 

思い返せば、今所属している研究室の門をたたいたのも、今指導していただいているBOSSが過去にやったプラスチックの物性研究(それこそ今話をされている内容と関連した研究だったのだけれども)に魅力を感じたからだった。僕はプラスチックが(AIやスマートデバイスなどの)電子部品や自動車部品といった、これから伸びていく分野で重要な物質になっていくと信じていたし、何よりその物性は、複雑性や制御可能なパラメータが異様に多いといった点で、学術的にもほかの物質にはない面白さを持っていた(もちろん僕にとってはという話だ)。役には立つし、面白い、そんな研究を僕はやってみせるぞだなんて、3回生だった当時の僕は妙に張り切っていたように思う。そのための努力は誰よりも惜しまなかった気がする*2

 

大きな希望を抱えて研究室に配属されたのはいいけれども、結果として与えられたテーマはプラスチックなんて程遠いテーマだった。それが今の研究テーマである「ゲル」なのだけれども、僕はこれっぽっちもゲルなんて興味なかったし、先生にゲルをやれと宣告されたときの絶望はとてつもない物だった。あの時顔を手で覆って「あー・・・」なんて情けない声を上げたことを今でも覚えている。

 

そんな中で特に大きな脱落をすることもなくここまでやってこられたのも、「は、上等やんやったろうやんけ」といった類の反骨心があったからなのかなと感じる。やれと言われてできないのはプライドが許さなかったし、極めてもいないのにうだうだ言うのもちゃんちゃらおかしい気がした。知識を蓄える、とりあえず手を動かす、考える、自分の考えを実験に反映させる、といったことをひたすらやり続ける。先輩や同期には些細なことで相談に乗ってもらった。BOSSにはこっぴどく叱られもした。そんなことをやっている内に、今の研究テーマを愛着持って楽しめるようになったし、少なからず成長できた気がする。プラスチック以外にも見える世界も広がった。今ではかけがえのない僕だけの研究テーマだ。まあこれはこれでよかったのかな、と今となっては思う。

 

自分の思ったようにやりたいことが出来ないなんて、自由意志が尊ばれる現代*3においてさえも往々にしてある、と僕は思う。実力不足だから、というのもあるだろうし、運であるとか巡り合わせの問題もあるのだろう。それでも、これからの悲しくも長い人生を生きていく上で、僕はやりたいことのやるためにできる限りの努力はしていきたい。でももし、必死に努力したはずなのに、望んだ道が目の前に現れなかったなら、それに失望することなく、まずは違う道を全身全霊で楽しむことができるように行動したい、と僕は切に願う。それでもやっぱり違うな、と思うのならその時本腰を入れて動けばいいと思うし、自分はそうであるべきだと思う。それを実現するということは、社会との戦い、己自身との戦いを意味するのだと思う。大事MANブラザーズも、それが大事と言っていた気がする。しかし、僕は耐えられるだろうか。分からない。

 

ふと、壇上で発表している人間が僕だったらどれほどよかっただろう、とよからぬ考えが頭をよぎる。

 

うだうだ考えていたら口頭試問が終わっていた。僕は荷物をまとめて、会場からそそくさ逃げ出すことにした。

 

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居室に戻った。隙あらば自分語り、で終わりたくないので音楽紹介をして終わろうと思う。

Megadeth - Trust

www.youtube.com

Why does trust equal suffering?といった歌詞にも表れるように、信頼というものは口にはしないだけで難しいという、Dave Mustaineのある種素朴な苦悩が真に迫る一曲。ヘビメタファンも、そうでない人も納得の名曲だと思う。是非聴いてほしい。

 

では

*1:博士論文

*2:ソースなし

*3:ソースなし