高吸水性樹脂って何?-めっちゃ膨らむワケー
サンプルを愛するあまり、合成したサンプルを食べました。
下がピリピリしました。
どうも、たかおと申します。
今回書かせていただくテーマは
です......”ご存じない?”
百聞は一見に如かずという擦り切れるほど言われたことわざがありますが、YouTubeのこちらの動画を見るとどういうものか一発で分かると思います。(はじめしゃちょー: 水をかけると何十倍にも膨らむ粉でお風呂作ってみた より動画を引用させていただいております。この動画の著作権等一切の権利ははじめしゃちょー氏にあります)
サムネイルで分かりますね。水吸って何十倍,何百倍にも膨らんでプルプルになる材料なんです。この材料は、この特性を生かして、おむつや生理用ナプキン、芳香剤など、日用品に広く使われており、今や我々の生活を支えるなくてはならない存在です。
この記事は
など,幅広く書いていきたいと思います。豆知識として,自由研究の題材のために,どうか使ってください。
それではどうぞ。
高吸水性樹脂とは
まずは定義です。
高吸水性樹脂~中略~は、多量の水を吸水してゲル化し、その吸水した水を保持する機能を有した高分子材料である。
さらに簡単に言うならば、「水を吸うとゲルになるプラスチック」「水を吸う前のゲル*1」ということができると思います。
ゲルとは?プラスチックとは?ということについては以下の記事で触れているので、参考にしていただければ幸いです。
上の記事の図を以下に改めて示しますが、ゲルは高分子のひも(網目鎖)が架橋点で結ばれてできた網目の中に、溶媒(水など)が入って膨れているものになっています。
ゲルに水が入っていないモノ、それが高吸水性樹脂の正体といえるでしょう。
高吸水性樹脂が水を吸う理由
では、なぜ高吸水性樹脂は水をたくさん吸い、保持することができるでしょうか。
それはゲルが膨潤する時にはたらく力(浸透圧)を基に説明することができます。この力のはたらき方がゲルの膨れ方を決めているのです。
先人たちの理論*2によれば、この力には
①ゲルの網目鎖が水に溶けようとする力
②ゲルの弾性力
③ゲル内部と外部のイオン濃度差に起因する力
の3種類があり、これら3つの力が釣り合うところまでゲルは膨れていくとされています。
それぞれどのような力なのか、説明していきます。
①ゲルの網目鎖が水に溶けようとする力
ゲルの網目鎖は水に入ると、水に溶けようとします。この時に、この鎖が広がっていこうとするときに生じるのがこの力です。「溶ける」というのは、溶けるもの(溶質)が溶かすもの(溶媒)の中で分散していくことだと理解していただければ、感覚的にわかっていただけると思います。
網目鎖が水に溶けやすければ溶けやすいものほど、水に溶けようとする力が大きくなり、ゲルは大きく膨らむことになります。
②ゲルの弾性力(弾性項)
ゲルは、弾性を持ったゴムみたいな材料です。ここでゴム風船を思い浮かべてください。風船に空気を吹き込もうとする時には、ゴムが元の力に戻ろうとする抵抗を受けますよね。ゲルにも同じことが言えて、ゲルの網目が広がりすぎるのを抑えるような力がはたらくのです。
従ってゲルが硬いと、ゲルの網目は伸びにくくなるため、ゲルの膨潤具合が小さくなってしまうのです。逆に言うならば、ゲルがより柔らかいものほど、ゲルの網目が広がりやすくなり、ゲルは膨らみやすくなります。
③ゲル内部と外部のイオン濃度差に起因する力
ゲルの中には、水中で解離してイオンを放出するものがあります。こう言うゲルの場合、ゲル内部と外部でイオン濃度に差が生じます。この時、イオン濃度の差を少なくするために、ゲル内部に水を多く取り込もうとする力がはたらくのです。
ゲルが内部にイオンをたくさん持っているものほど、イオン濃度差が大きくなるので、ゲルは膨らみやすくなります。
ゲルが膨らむ力で一番大きいのはこの力で、大きく膨らむゲルの大半はイオンを持っています。*3 *4
まとめると
図で書くとこんな感じです。
上に書いた要素を基に、できるだけ水を吸うように設計されているのが高吸水性樹脂なのです。水に溶けやすい網目鎖で、できるだけ柔らかい、かつイオンを分子に含むように高吸水性樹脂は設計されているとも言えます。
今更ながらですが、この力を、ゲルに生じる「浸透圧」と呼びます。
これは本当に最小限の要素です。高吸水性樹脂が高性能たる理由は、その技術が多岐にわたるため、ここで説明しきることはできません*5。この辺りに興味がある方は、是非検索してみてください!*6
色々な高吸水性樹脂
ここで何種類か世の中の高吸水性樹脂を紹介していきたいと思います。
ポリアクリル酸塩系
王道中の王道。世の中一般で言われている高吸水性樹脂は大体、ポリアクリル酸ナトリウムを網目鎖に使ったものになっています。分子構造もいたってシンプルです。
デンプン - アクリル酸塩グラフトポリマー
世界で初めて開発が試みられたタイプの高吸水性樹脂として有名ですが、上記のポリアクリル酸塩系と比べて製造工程が複雑だったりするために、現在では主流ではなくなっています。しかしながら、デンプンは生分解性があるということもあり、安全性の点から、医療系や農業系の用途で使われているものが多いイメージ*7。
デンプンの鎖に、上のようなアクリル酸ナトリウムの鎖が櫛状(ブラシ状?)についている構造を想像していただきたいです。
その他
他にも無水マレイン酸共重合体系*8、ポリビニルアルコール系*9などが知られています。用途に応じて、いろいろな高吸水性樹脂が使われているのです。
最後に
いかがでしたでしょうか。高吸水性樹脂が何たるかを理解していただけたでしょうか。入門には厳しすぎたかも?書きたいことを抑えに抑えて書いたのですが、相変わらずのまとまりのなさ。もはや持ち味。そんなところでしょうか。
質問・アドバイス等あればコメントにどうぞ。
では
*1:水を吸っていない物はゲルではないので、本来この表記は正しくない
*2:田中・柴山らの理論がゲルの基礎理論にブレイクスルーを与えた。詳細についてはいずれ記事をまとめたい
*3:そのため、多くのwebページでは、イオンによる浸透圧が高吸水性樹脂が膨らむ理由だと説明している。この記事では多少の厳密さを追求しているため、ほかの二つの力についても言及した。
*4:また、よく「イオンの反発」によって網目が広がる!と言っている人もいるが、正しいとは言えない。
*5:表面加工による吸水力向上、柔らかさと形状保持の両立など。
*6:つい最近までよくまとめられたページが存在していたが、現在アクセスできなくなっている。紹介することが出来ず、申し訳ないです。
*8:耐熱用途が多い。
*9:これも生分解性・生体適合性があるタイプのもの。砂漠の緑化などにも使われているかも